・設計趣旨
 今日、21世紀を目指した首都圏近郊の生活環境づくりの課題として、地域コミュニティの構築、高齢化社会への対応、自然環境との共生、そして、都市と農村の融合した新たな生活スタイルの創造等があげられます。
 このような点を踏まえ、「比企の田園都市型住宅」を提案致します。
田園都市型住宅の基本理念
*本提案での比企地域における田園都市型住宅(以下、田園都市型住宅)は、自給自足への志向性を持った都市型住宅である。(アウタルキー)
*田園都市型住宅は、コミュニティの構築と近隣との連帯に対して積極的である。(コミュニティー・ネットワーク)
*田園都市型住宅は、自然な素材を用いて地域の生産手段によって建設される。(ナチュラル・テクスチュア)
*田園都市型住宅は、省エネルギーを志向し、代替エネルギーを積極的に取り入れる。(パッシブソーラー・システム)
*田園都市型住宅は、高齢者の生活に対して、極力障害を排除し、二世帯居住を目指す。(バリアー・フリー)

提案内容
●まちなみ集落的景観の構成
 近隣との連帯感を高めるため、各住宅個別のデザインに共通性を持たせ、集柱体としての一体感を強調し、まちなみ集落として特徴ある景観的な雰囲気を持たせるよう意図した。また、L型プランを左右反転させ、北入り、甫入りタイプを設定することにより、配置全体としてみて、緑地や庭空間に比較的大きなまとまりを得られるようになっている。
●伝統的軸組架橋と間取りの一体性
 構造方法は、木造在来軸組構法を採用し、架橋のかたちが内部空間のかたちとなるよう架構設計を重視している。内部空間は、基本的に真壁構造とし、柱、梁を露出させ本の温もりを感じさせる生活しやすい自然の素材にあふれた空間となるよう意図している。同時に引き戸を積極的に取り入れている。
●太陽光エネルギーの利用
 多機能なソーラー・システム(既成晶、OMソーラー協会)を採用することにより、吹き抜け空間の冬期の温熱環境の快適性を高めることができるよう計画している。効果としては、1)床暖房による健康的な暖房方法であり、はだしの生活ができる、2)夏期の屋根裏の熱が強制的に排除できる、3)強制換気によって室内が清浄化できる、等が考えられる。
●屋外生活を楽しむ庭先コミュニティ
 庭先空間を積極的に活用するため、コミュニティ空間としての屋外での家事(作業)コーナーを設けている。この家事コーナーには、水場、火場(バーベキュー・コーナー)、テーブル、椅子等を設置し‥屋外での家族や、隣人とのコミュニケーション・スペースとなるよう意図している。またこの空間は、犬、あひる、鶏などの飼育や野鳥と呼応する庭先空間でもある。
●高齢化対応と二世帯居住
 将来の高齢化に備えるため、和室と洋室との段差を解消すること、また、浴室、トイレ等への手すりの設置、引き戸の多用、さらに、玄関に壁つき折りたたみ式のベンチの設置を計画し、高齢化社会に対応した長生きの住まいづくりを目指した。二世帯居住のための老人夫婦の自立した生活を積極的に支援するため、予備室として付属した独立した台所を備えるよう計画している。
●家庭菜園付き駐車場
 本計画では、9戸のうち3戸の住宅(32-2,3,4画地)に限って、屋上家庭菜園付き駐車場を提案した。この駐車施設の建築面積は、15.0m2であり、このままではこの敷地の建ぺい率をオーバーしてしまうが、今回屋上緑化を意図した駐車施設にかぎり、それをあえて認め建ぺい率を50%まで緩和することとして提案したものである。このことによって、田園都市型住宅の自給自足の理念を満足させ得るものと考えたものである