建築設計者としてのスタンス
【Q1】
建築家としての原点、建築家を志したきっかけをお教えいただけますか?
子供の頃、地面にチョークで機関車の絵を描くと、実際に本物の機関車になって走り出すという漫画を見て、そうなったらいいなという夢を膨らませていましたね。イメージが現実になるというか。その後高校生くらいになって日本初の超高層である霞ヶ関ビルができました。技術の進歩に感動するとともに、何か、ものつくりに子供の頃から興味があったみたいです。
【Q2】
建築家として、どのような住宅を作りたいとお考えですか?
また、住宅づくりの魅力はどこにあると感じられていますでしょうか?
昨今は地球温暖化や環境の悪化などで、省エネルギー型の住宅が求められているように思います。化石燃料に依存しない自給自足型というか、自然環境を最大限有効利用することのできるような仕組みを持った住宅でしょうか。
家作りは人作りというか、技術もどんどん進歩していますし、永遠に未完成であるというつきない魅力を持っていると思います。
【Q3】
施主の要望を住宅にどこまで、どのように反映されようと考えていらっしゃいますか?
普段の話し合いが重要です。特に打ち合わせをできるだけ多く重ねて、設計者と施主の考えが同じになるように持っていくことが大切ではないでしょうか。イメージを共有することで取り組み方に弾みがつきます。
【Q4】
ご自身にとって印象深い作品と、そのコンセプトやエピソードをお教えください。
最近のA邸では時間もかかりましたが、木造の架構と内部のインテリアが柔らかくミックスしていい雰囲気になっていると思います。サステナブル、いってみれば持続可能で生命維持的な田園都市型住宅のコンセプトを秘めています。
F邸では、いまでは古くさく見えますが差し鴨居構造の農家住宅を再生したものです。古くなったからといってすぐに取り壊してしまうのではなく、手を入れていけば新築にはない味がありますし、床暖房などを併用してとても住み心地よく仕上がっていると思います。
【Q5】
影響を受けた建築家はいらっしゃいますか?また、感銘を受けた建築物はございますか?
やはり近代建築の4大巨匠、といわれている、ル・コルビュジェ、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファンデル・ローエ、アルヴァ・アアルト、があげられます。日本では奈良時代の法隆寺とその頃の匠(たくみ)による建築、また桂離宮など、小堀遠州の時代の建築と庭園などが頭に浮かびます。どれか一つに絞ることはできません。
【Q6】
海外と同じく、日本でも既存住宅の再利用・有効活用が盛んになりつつあり、リノベーションやリモデルが注目を浴びていますが、どのようなお考えをお持ちでしょうか?
省エネルギーを突き詰めていくと、構造体をしっかり作っておいて、再利用していくという考え方になると思います。上下水道の配管がちゃんとしていて、断熱材が施され、夏冬を快適に過ごせれば何の問題もないと思います。人生のライフステージの各段階で少しずつ模様替えをしていくという考えで十分ではないでしょうか。ただし既存の戸だて住宅の場合、改正後の建築基準法への適合性が求められていることには留意しなければなりません。
【Q7】
東日本大震災を受けて、住宅・建築に対する捉え方も変化すると思われますが、今後、建築家として社会にどのように関わっていこうとお考えですか?
社会に対して、積極的にビジョンを示せるというか、将来の明るいイメージを提供してあげられる、そんな住まいや環境作りのパートナーが理想的に思われます。